元プロ野球選手であり、元メジャーリーガーである吉井理人によるコーチについての本です。
自身はコーチという仕事に興味がなくやりたくなく、というのもコーチについて良い経験よりも悪い経験の方が多かったそうです。
初勝利の時、コーチが寄ってきて、まだまだだなみたいなことをネチネチと言われて、怒ったという経験ということもあったそうです。
そんな彼が取るコーチングというのは、自分で答えを見つけさせるコーチング。
もどかしさ、じれったさはあるもののそうすることで、自分で課題を見つけ、解決していけるようになる。
そうすることで、どうしてあそこでフォークを投げたという質問に対して
「キャッチャーがサインを出したから」 -> 「自分はカーブの方が良いと思ったけど、サインがフォークだったから」 -> 「自分はフォークより他のボールが良いと思ったから首を振った」
と選手が自ら考えていくようになったそうです。
コーチとして接してきて、振り返りがしっかりできる選手はほとんどおらず、唯一できていると感じたのがダルビッシュくらいだったそうです。
好奇心を持ち、自分を向上させていくことができる。
面白いコーチングだなと思ったのが、投げない投手を新聞記者役として試合を見させ、投げた投手に質問をする方法。
新聞記者役の投手は試合や投手について客観的に見ることができ、投手は自分を振り返ることができるようになる。
かなり物事をロジカルに考えているなと感じられる内容でした。
目的、目標、課題とブレイクダウンしていく考え方、とか。
選手の性格は6つの要素から考えており、強気、冷静、大胆、臆病、冷静、慎重。
強気で直情では大失敗につながる。こうした選手には、最悪のケースを想定させ、そこには投げないようにして、どうすればいいのか考えてもらう。
臆病で何もしない選手は最悪、しかし臆病な選手が大活躍するそうです。
例としては、武田久選手、実際に接したことはないが、佐々木主浩投手もそうだったのではないかとのことです。
臆病だから、一歩下がってさまざまなケースを想定し、冷静に見ることができる。その中で最善のケースを選択する。
失敗談
コーチングとして自分の失敗談が貴重でしたね。どんな本もそうですが、多くが自分の成功体験だけを華々しく披露し、それで終わりがちですから。
間違った指導が、取り返しにつかない体験談がありました。
力みが感じられるある投手に力を抜けと指導したら、本当に力が抜けてしまい、ボールのスピードが落ちてしまった。その方法をやめようと言っても、選手は、前の状態に戻れず、引退してしまったと。
不幸中の幸いとして選手は球団のフロントに入れたものの、一つの指導が選手の生活を奪ってしまうことにもなると。