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死生学の良書「死にぎわに何を思う」

ソクラテスは哲学とは死を学ぶことだと言ったそうです。

なかなか死について考えるのは縁起でもない、不吉だ、と遠ざけがちでしょう。

後述するエリザベスも「死人を食い物にするハゲタカ」と批判され、圧力をかけられたこともあるようです。

誰にも避けては通れないに公に語ることが憚れる死。

肺がんで死の淵に立たされた筆者により死について語られるのが本書です。

そこまで厚い本でもないのですが、内容は充実している本です。

死生観

死生観とは、「自分はどう死ぬか」「死んだら自分はどうなるのか」についてのイメージです。

どう死ぬかとどう生きるかということは表裏で切り離して考えることができないものです。

本書では、その死生観について、主に加藤咄堂さんさんという人の出した「死生観」という本をベースに語られています。

過去の偉人の死に様についての見解や、釈迦やソクラテスの思想について論じ、進化論や分子生物学を紹介していきます。

良い死とは次の3つ。

  1. 生死一如という仏教達観に至って死ぬ
  2. 死ぬことで社会的に生きようとする
  3. 死ぬのを天命として受け入れる

生死一如(しょうじいちにょ)とは、生死は一つのごとし、生きるということはいつか死ぬ、死ぬということはそれまで生きている、生と死は切り離すことはできない、よって生死は1つである、という意味です。

VOL.127 生死一如(しょうじいちにょ) | 天恩山五百羅漢寺

悪い死とは次の3つ

  1. 死んだら楽になるだろと、自暴自棄になる
  2. あの世で幸福を掴もうと思う
  3. 死んだら天国にゆけるという迷信を信じる

咄堂が行き着いたのが

死は人生の一大事実なり、しかり、喜ぶべき一大事実なり、楽しむべき一大事実なり。吾人はこれによって多くの教訓を得、多くの刺激を受けて、人生の真意義を解することを得たり

ジョブズの死は人生最高の発明だという言葉を思い出しました。

gendai.media

受容プロセス五段階説

エリザベス・キューブラー・ロスは、死に近い患者を招いて「死ぬということをどう感じているか」を学生たちに語ってもらうという試みをします。

反響を受け、本も出版し、エリザベスは受容プロセス五段階説を提唱します。

  1. 否定 ... 自分は死ぬなんて間違いだ!
  2. 怒り ... なぜ自分だけが死ななければならないか?
  3. 取引 ... 長くは生きられなくてもこれだけはそのためには〇〇をするから
  4. 抑鬱 ... 何をしても無駄だと思う
  5. 受容 ... 最後に死を自然のサイクルとして心穏やかに受け入れる

筆者によると、これを順番に辿っていくのは少ないのではないかと言います。筆者自身も5段階にいたと思ったら、2段階に戻ったりすることがあるそうです。

戦後の死生観

医師に何の病気で死にたいかとアンケートをとると「がんで死にたい」という答えが断然トップに来るそうです。

ぼくには、これはとても意外でした。苦しまずポックリなくなるのがいいと聞いたことがあり、ぼくもそうかなと思ってました。

しかし、がん、だと。

理由は3つ。

  1. 死期をかなり正しく推定できるので計画を立てやすい
  2. QOLを落とさずに末期まで活動ができること
  3. 緩和医療の進歩のおかげで麻薬でかなりのところまで痛みを抑えることができる

なるほど、がんになってはいけない、ならないには越したことはない。しかし、死ぬ前提で選ぶ病気は、がん、と。

死について考える時間が与えられる死に至る病が、がん、なのでしょう。

そのがん患者の方から、死について学ぶパートとなっています。

安楽死

ヨーロッパでは安楽死が進んでいます。

死ぬ権利があることで、生きる活力が湧いてくるという人もいます。ぼくには正直、あったところで、そうなる気はしませんね。

日本ではあり得ないような状況になっています。

本書では日本国民の7割が安楽死賛成だし、良いのではないかという論調です。

ただ、ドイツでは安楽死は認められていません。

これは、ヒトラーの時に、劣っている人を安楽死させたこと、それをユダヤ人虐殺に利用した安楽死の闇が存在するからです。

看取りコンプレックス

大切な人の看取りをできなかった時、どうすればいいか?

本書では、柴田久美子さんという方の言葉を紹介しています。

死んでも魂は、残った人にエネルギーを渡すため、1週間のあいだ近くに止まってくれているのよ。イギリスからでも一瞬で日本に飛んで来られるのだから、一緒にいるつもりで暮らすのよ。朝はおはようと声をかけ、一緒にコーヒーを飲み、ご飯を食べ、散歩をするのよ