建前ばかりの日本企業の人事の方に読んでいただきたい本だと感じました。
自分が今まで勤めてきた会社の制度や風土に対する疑問に対しての答えがあるなと感じました。
真剣
3人で起業して、とんとん拍子で会社を拡大し、わずか3年で上場、そして東京へ移転。
しかし、社内は愚痴ばかり、指示を待ったまま仕事をしない人も出てきてしまう。
ビジネスモデルを売り切りから保守契約を導入して見直したりして売上は持ち直したが、人事制度は成果主義で、協力し合わずに無茶苦茶。
そんな中で筆者が社長になったものの、M&Aを繰り返して、買収した会社によりサイボウズ全体としては大幅な利益減となってしまう。
買収することは会社を拡大するだけではなく、会社のリスクも受け入れることを意味することを思い知らされる筆者。
そんな中、松下幸之助の本に出会い、「真剣」という言葉に出会います。
筆者は創業時点からサイボウズに自分がいたから、自分なら社長ができるだろう程度に考えており、頑張ると命を懸けるのではレベルが違うと真剣スイッチをONにします。
その後も次々と困難が発生するものの、保身を諦めるという「覚悟」のコツにより、向き合うことしかできなかったものの、向き合えば問題が解決に近づくことがわかったそうです。
人間は理想に向かって行動する
真剣さが必要というのは理解ができた、では、社員はどうして辞めてしまうのか。
メモを読み返す中で
人間は理想に向かって行動する
という共通項に気づきます。
なぜ社員が辞めるのか?
辞めることで理想を実現したいから。もっと残業を減らしったい、もっとスキルの上がる仕事をしたい、もっと高い給料が欲しい。
そこで全社共通の理想を決めようと考えます。
売上を3倍にすると理想を掲げたこともあるものの、周囲にはそんなこと言いましたっけ?と言われる程度でしかなかったのです。
ビジョナリー合宿などを通し
世界で一番使われるグループウェア・メーカーになる
となりました。
グループウェアだけではつまらないと辞めていくネガティブな反応もあったものの、そこはグッと堪えて全社員にメッセージを伝えたそうです。
多様性
組織のミッションが決まったところで、組織のイズム(在り方)を定義したいところでした。
そこで、管理部門の責任者に言葉を探してもらい
- より多くの人
- より成長
- より長く働く
という3つの言葉が選ばれます。
当時は、良い言葉を選ぶことができたと考えたそうです。
しかし、これらの方針は大きく転換が進んでいます。
その中で多様性という言葉が残っています。
サイボウズの考える多様性が、自分としてはしっくり来るなあというのがありました。
よく言われるのが女性の管理職を増やせとかで、外国人の採用を増やせというもの。
そうではなく、女性は女性で子供がいたり、独身であったりするし、日本人とか男性とかそうしたカテゴリーでまとめている時点で多様性は存在しない。
そうではなく、一人一人を別々の人間として考え、100人いたら100通りの人事制度があって良いという方針が掲げられています。
そこから選択人事制度として、働く時間をA-Cと働く場所をA-Cの3*3の9通りから選べるようなシステムを導入しています。
サイボウズでは在宅勤務を導入しています。今ではコロナの影響で導入されていますが、サイボウズではその10年近く前の2010年からです。
多様性の組織の問題解決メソッド
ただ、多様性は、一人ひとりが別々の考え方を持つため、議論が発散しやすいという問題もあるのです。
事実に対して人が考えた結果が、解釈になる。つまり、同じ事実でも人によって解釈が異なることになることを踏まえて、問題解決メソッドを確立します。
- 問題を発見する
- 問題を認識する
- 理想と現実、解釈と事実のマトリックスの4つで考える
- 原因を検討する
- 課題を設定する
モチベーションが上がらないのは何が足りないのか
以下の3つのどれかの要素が欠けているとモチベーションが上がらない。
- やりたいこと
- やるべきこと
- できること
制度には、理想となる「目的」を明記する
部活動に会社のお金を使うなら、給与に還元してくれ、そういうのも多様性。
そこで部活動の制度については、部門間コミュニケーションの活性化という目的を掲げる。
全ての制度に目的を掲げ、それに矛盾するなら廃止する。この一貫性が、メンバーには納得感や一体感をもたらす。
制度を廃止する、これが大事だと思ってます。これまで在籍した組織で形骸化した制度に縛られている状況を目の当たりにしてきたので。