クライオニクスって何?と思ったら、生体冷凍保存技術か、と。
コールドスリープね。
なんかの漫画で読んだ、現代の技術では治せないから、コールドスリープで、技術が発展した未来に託す、みたいな。
冷凍技術が発展すればできんじゃない?
とか思ってたのですが、その辺りの実現性について漫画で説明した本です。
キャラクターは可愛いですが、内容は専門用語がバンバン飛び出します。
簡単にいうと、ただ細胞が破壊されないように冷凍するには、有機溶媒を流し込まなければならず、これは体にとって、特に脳にとって毒であるため、不可能。
では、どうするかというと、他の生物で、クマムシのような耐乾性や耐凍性を持つ生物がおり、そうした生物は、マイナス273度にも耐えられる状態になれるそうです。
このような耐性を得られればできるのではないか、というのが一つ。
もう一つは有機溶媒を減らして冷凍できる技術を生み出す、というものです。
このあたりの技術的なことは本書に任せるとして、一番興味深いのは生命観です。
この作品の主人公は、漫画やアニメで出てくる不老不死を考える人たちはだいたい悪役で報われないことに違和感を覚えることからクライオニクスについて調べるという展開になっています。
その違和感というのは何か。
それがDNA。
DNAを中心とした生命観です。全ての生物の主体はDNA。
世代交代で引き継がれるのもDNA。生物はDNAを守り、DNAを維持・増殖させるための一種の装置にすぎない、と。
生物が、生き延びて、子孫を遺すといった種の保存の行動原理はDNAのためでしかないのではないか、ということでしょう。
そうではなく、あるべき理想的な生命観が、脱DNAによる生命観だといいます。
人間の主体は脳であると考える生命観。種の保存だけを目的に終わる使い捨ての装置ではなく、各個人の脳が唯一無二であり、守られるべき存在である、と。
脳。いわば、魂のような捉え方かもしれません。
という脱DNAという思想が、この技術の裏側にあるようです。
ぼくとしては脱DNAという考え方に対して、共感しているかというとそうでもないです。
脳って、いっても、人の考えって変わるものだし、不変なものだしなあと。
DNAに支配されているという考え方そのものにもピンとはきてませんし。
ただ、まあ、そういう考え方もあるんだなあ、とは思いました。