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日本はよくここまで続いているんだなあ「ローマ帝国衰亡史」

まず、本書は、実に長いです。

昔だったら、とても、とても、このような本は読まなかったでしょう。

空港の搭乗までの待ち時間を潰すのにうってつけでした。

広島旅行の帰りとかは、早く空港につきすぎて何時間も空港で待つしかなかったので。

ローマ帝国といえば、人類の歴史の中でも、永く栄華を極めた国といえるのですが、読んでいると、まあ、苦難続きに見えます。

とはいえ、順風満帆の時期は、さほど書くこともないでしょうからね。

まずは、帝国政治の難しさ。

土地が多ければ資源も多いわけですが、いいことずくめではなく、多くの問題も背負わざるを得ません。

これは旧ソビエト連邦でもわかっていたことで、領土が広く、結局、統治しきれず、解体されて、今は旧ソビエト連邦だった国々は独立してロシアとは別の国家となっています。

今、ロシアが攻め入っているウクライナがそうです。

ウクライナ情勢はロシアからするとかつては自国領土だったという感覚もあるんでしょう。

特に皇帝に政治能力がないと、それがもろに出ます。

荒れに荒れたローマ帝国を再建するディオクレティアヌス帝は一人では統治しきれないことを自覚し、マクシミヌアス帝を置き、さらに副帝を二人置く形にします。

ディオクレティアヌス帝は皇帝の権威を示すため、宮廷儀礼を絢爛豪華なものとし、皇帝に拝謁するために複雑な手続きとしたそうです。

そんな手法があるか、と。

以前の職場で、社長が権威を示すためにやっていたちゃぶ台返しのようなものですね。

そして、読んでいてこれでもかとわからされるのは政治の難しさ。

ローマ帝国の政治の大きな課題は二つ。蛮族の侵攻への対応という外圧と、他の政敵との対立という内圧。

おそらく、これはいつの世にも通じるのではないでしょうか。

平和だという現代の日本でも、北朝鮮のミサイルや、戦という目に見えない経済的な形でも対応が求められます。

でありながら、議会では野党の対応をしていかなければならない。という板挟み状態なのです。

実際、まだまだ世界の多くが独裁国家であり、ロシアや中国もかなり独裁色が強いです。独裁国家は内圧をかなり抑えるメリットは、やはりありますからね。

独裁政治がいいというのが言いたいわけではなく、独裁政治になりがちなのもわからなくないほどにローマの内紛はまた頭が痛いのです。

また現代の日本でもあまり幼稚で現実味を欠いた発言を繰り広げる野党が個人的には頭が痛いのです。それは政治家がいうことなのか、と首を捻ってしまいます。

皇帝になるような人間というのは見栄っ張りで権力欲の塊です。それが彼らを突き動かす原動力であり、それがなければ皇帝の地位に長らく居座って、国家を安定させることも不可能なのです。

ここが人間の難しさなのです。

ちょうど、アナザーラウンドという映画を見ていたのですが、ヒトラーは大酒飲みでもなく、女性に対して敬意を持つ英雄だったそうです。それが歴史的に汚点を残して語り継がれてしまう。映画内で言っているように「思う通りにはいかない」、と。

じゃあ、権力欲があれば政治ができるかというと、それはまた別の能力です。

ディオクレティアヌス帝の時、副帝であったコンスタンティヌスが台頭する時代には、色々あって6人の皇帝が存在することになってしまいます。

コンスタンティヌスが他の皇帝を打ち倒していく漫画的展開でここは見どころなのですが、当時のローマ帝国の市民からすれば、やめてくれ、どうしてそんなに揉めるんだ、と。

コンスタンティヌスからすると穏便に済ませようとした対立もあったのですが、相手も野心があったために、戦いは避けられない状況になってしまうのです。

そんなこんなでコンスタンティヌスが国を治めることになり、ローマではなく、コンスタンティノポリスに遷都します。

ここを選んだのは、当時のローマ帝国の一番注力するべきペルシャ軍や蛮族へ配慮するのにうってつけだったため。

歴史家からすると、このコンスタンティノポリスに財力を使って国費を浪費してしまったというのですが、当時の状況からそれが賢明な判断だったのです。

さらにいうとコンスタンティヌス亡き後は、また後継者で問題になっています。

もっというと、内紛で揉めた結果、国の財政を使ってしまったと指摘される。

最終的にはローマは蛮族に侵略されるという当時の彼らからすると屈辱としかいえない事態に陥ります。

東ローマ帝国として東側はローマ帝国として残りますが、結果的にはコンスタンティノポリスは今はトルコの首都になっているように、オスマン帝国に敗れ陥落するのです。

今となってはローマ帝国はなく、イタリアの首都がローマとして残っているだけです。

日本

要は日本はここまで続いているよな、というのが、僕が読んでの一番の感想です。

黒船襲来や大東亜戦争敗北後になんとか国体を維持したという経緯はあれど。

現代の日本も、先ほどの野党とあるように民主主義はいえ疑問を抱く政治家を幾らか内包する歪な議会構造、アメリカに依存した軍事力、隣国とは挙げればキリがないほど実は問題を抱えています。

この本から学んだ国家存続のポイントは、内圧と外圧。

先日、大英帝国衰亡史という本も読んだのですが、結局は、戦争によって国費を使ってしまい、衰退していったとされます。

とにかく、なるべく戦いを避けるのが必須。

とはいえ、戦争は外交の一手段であるので、また難しい。

ブロック経済を打ち破るために、大東亜戦争となったのはまだしも、落とし所がなく、全ての投げ打ってしまいました。

なんとか奇跡的に経済回復を遂げていますが、次はあるのでしょうか。

他の帝国は

先進国で帝国はありませんが、ローマ帝国に似た国はいくつもあります。

先ほどに述べたロシア、中国。

ロシア、中国については、絶対的なリーダーが君臨していますが、コンスタンティヌス帝亡き後のように後継者はどうなるのかが難しいでしょう。

アメリカについてはベトナム戦争アフガニスタンについては戦争は外交の一手段というべきか、第二次世界大戦以降も戦いをしています。

こうした戦争により軍需産業が潤うという話もありますが、アメリカ財政はどうなのでしょう。

内圧については自由の国なわけですが、保守的な共和党とそれを抑える民主党の二大政党制というか二大政党交代制みたいな形が機能して、バランスを取り、国民の感情の揺り動かしにうまく働いているようにも思えます。(あくまでも僕の一意見です)

諸外国に圧力をかけろ!俺たちの仕事がなくなる!から、いやもっと平和にやろう!穏健に!、みたいな。

ユーロ

ユーロをかつてのローマ帝国と例える記事を見たことがありますが、まあそうですね。

ヨーロッパはユーロとして経済共同体を形成しているわけですが、これも台頭する大国に対抗するための手段なのでしょう。

軍事的ではなく、経済的な形で生まれたローマ帝国のような形です。

しかし、そこからイギリスが独立する、と。

ソビエト連邦が解体されたのと一緒の結末を送るのではないかと思ってしまったりもします。

東ローマ帝国のように一部の国家は長らくユーロとして存続するのではないかと思いますが、離脱する国もまた出てくるかもしれません。

ただ、ウクライナ情勢で、ユーロは離脱しない方がメリットは大きそうですが。

ローマ帝国衰亡史は、現代国家についての見方をも教えてくれる本です。

国家や政治は難しい。こういう形であり続ければ、国は長らく繁栄できるという答えはないものだとしみじみ思います。

ユーロやアメリカ合衆国は一国家とはまた違った国家体系ですし、今後はテクノロジーの進歩により人工知能が政治をする時代が来るかもしれません。

とても滑稽に思えるかもしれませんが、戦をする上で占いをしていた古代を滑稽だと思うようなものです。

当時の彼らは占いを本気で頼っていたのですから。未来で本気で人工知能を頼っていることだってあり得ます。