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読書感想「愛を乞う皿」

愛を乞う皿

タイトルの愛を乞う皿の意味とは?

表紙の蟹を描いた皿は?

星岡茶寮では、どうしてお通しに野菜屑を使った料理が出るのか?

本書は北大路魯山人をモチーフにしたフィクションになっています。

茶寮の料理は俺の人生が詰まっている

と物語を通して、浮かび上がってくる疑問が一つ一つ解消されていきます。

全体的な構成が亡くなる寸前の北大路魯山人にとっての重要な人物に見舞いに来てもらうよう説得するとなってますが、これで話が成立するんかと思っていましたが、見事に成立していますね。

ここは筆者の腕ですね。

蟹が脱皮するように北大路魯山人は何度も名前を変えています。妻も変えています。本書では5度の結婚と5度の離婚となっています。(しかし、wikipediaを見ると実際には6度の結婚と6度の離婚のようです)

生まれた頃から里子に出され、家庭が人一倍欲しいという思いがありながら、家庭を知らぬゆえ不器用にしか家庭と築けない結果なんでしょうか。

それゆえ表紙の皿が、愛を乞う皿であり、それが魯山人そのものだと位置付けることができます。

それだけでなく、皿と料理は夫婦と本書で語られるように、純粋に皿が料理に乗せて欲しいと叫んでいるともいえます。

蟹は横に歩くことから誰かに媚びたりしないとされています。金や名誉という執着を捨て、芸術に身を投じた魯山人の渾身の一皿でしょう。

というわけで、物語のみならず、そのテーマに対して、なかなか考えさせられる重みのある話になってます。

現代の小説には珍しく文学作品の匂いを感じましたね。