「グーグル ネット覇者の真実」を読んだのですが、632ページという相当なボリュームで読み応えのある本でした。
内容は濃いです。これでゴールデンウィーク10連休過ごせてしまえるくらいに。
Googleを知ったような気になっている自分でしたが、この本を読むとGoogleの知らない話を知ることが出来ました。
Googleの検索エンジンの開発から、Gmail、Android、YouTube、中国進出と撤退、オバマ政権へと転身していくグーグラー、と一大叙情詩でした。
いつか漫画「スティーブ」のように漫画になって欲しいと思ったくらいです。
私が印象に残ったことをつらつらと書こうと思います。(ネタバレ注意)
ラリー・ペイジ
ラリー・ペイジの両親は学者で、論文の被引用数から記事がどれほど優れているかわかると考えたそうです。
2002年時点でこの言葉の次には何が来るか、と予測する機械学習をしていたようです。今、私が機械学習だ!と騒ぐ10年以上だったのです。
スピードにかなりこだわりがあり、人生は70億秒で、その数秒をも無駄にすることは許さない。実際に応答速度をミリ秒単位で計測できたという伝説まであったようです。
Gmailの応答速度の遅さに、こんなものを使わされるならば、ガソリンをかけられて火をつけられたらマシだとまで言います。
Googleのデザインは主観的な美的感覚よりも、クリック率とパフォーマンスに力が入れられており、このパフォーマンスにラリー・ペイジは目を光らせていました。
現在はGoogleの持ち株会社であるアルファベットで自動運転などの事業を買収し、運営しています。
ライバルを蹴落とすとかくだらない。そんなんだから潰れるんだ。
そのスケールは縮こまった自分の視野を広げるものがあります。
チャーリー・エアーズ
Googleは社員食堂に力を入れており、無料の食堂が用意されています。
その社員食堂の最初のシェフがチャーリー・エアーズです。
この文化はグーグル・チャイナでも同様で、グーグル・チャイナのトップの李が自ら社員食堂シェフを選んだそうです。
陳天浩とAPM
Googleでは当初マネージャーが存在しませんでした。ラリー・ペイジがマネージャーを必要なく、自己管理すればいいと考えてました。
ただ、そこに駆け込み寺となれる頼れる人が必要なのだと説得していきます。
CEOになりたいコンピューターを専攻している新人にAPM(アソシエイトマネージャー)という役割を与えます。
彼らはベテランのエンジニアに対して、数字を提示して説得してPMとしての力を確立していきます。
本の中ではとりわけ活躍しているのが陳天浩です。
Googleツールバーを広めるためにポップアップをブロックする機能を追加してみてはどうかとラリー・ペイジに提案します。
ラリー・ペイジは、この会社は君みたいなのをどこから拾ってきたんだ、とまで言います。これが普通の人だったら、ガッカリしてスゴスゴと引き返すところです。
そこで取った彼の仰天の行動は、ラリー・ペイジのパソコンにツールバーをこっそりインストールしたのです。
すると、ラリー・ペイジは、「早くなった!」と気づき、陳の提案を受け入れたのでした。見事な逆転劇です。
これだけでなく、陳はAndroidというオープンソースのスマートフォンプラットフォームの買収も手がけています。
グーグル・チャイナにも参画したのですが、残念ながらここでは水が合わず、去っていったようです。
セルゲイ・ブリンとグーグルチャイナ
本の中ではCEOのエリック・シュミットの動向とラリー・ペイジの発言が目を引きます。が、グーグルが世界に進出していく中でセルゲイ・ブリンの判断が登場します。
話し合っても仕方ないのでセルゲイ・ブリンが邪悪でないと判断したものは邪悪でないとしていたようです。
セルゲイは検索して差別的なサイトがヒットしたことがあることに心を痛めるものの、自分の思想信条を押し付けるべきではないとしています。
タイでは国王への侮辱は許されない、ドイツではホロコーストの否定が法律で禁止されている。そうした検索結果を削除しろと言われるのですが国と戦ってきました。
ですが、中国だけはそうもいきませんでした。
中国政府に従わないと、サイトへアクセスすることも遮断されるようになります。
政府となんとか取り合い、検閲の指示に従ったりもしていきますが消耗していき、さらにはGmailなどの個人情報が盗まれるというハッキングが発生します。
このハッキングは中国政府は濡れ衣だと否定していますが、中国政府によるものとGoogleは考えています。
中国政府という国家の恐ろしさを身にしみて感じたものです。
ある意味、アメリカを、世界を代表する企業Googleが中国のサイバー攻撃という戦争に敗れたと考えると、なお恐ろしい。
2000年代にあと2年もすれば若いリーダーが現れて変わるという発言がこの本で登場したり、世間がいつか中国バブルは弾けるとずっと言われてるんですけど、もう2020年も見えてきてるんですよね。。。
こうした抑圧的な中国政府の方針に対して、セルゲイは検閲はやめるべきだと主張し、その主張が通ります。香港のサイトに転送される形で中国撤退となったようです。
ポール・ブックハイト
GoogleでGmailを開発し、GoogleのモットーであるDon't be Evilという言葉を考えた人間。
Gmailは勝手に作っちゃったそうです。
メール送受信をWeb上で行えるだけでなく、容量も無制限。定期的に消すこともないというイノベーション。
当時はAjaxという言葉すらなかった時代です。
ブックハイトのこのイノベーションにはわぁーすごいなーと思いました。
JavaScriptだけでメールサービスが作れるのかとGoogle内部でも懐疑的だったようです。
ですが、メールも検索対象だからと、ラリー・ペイジたちからは歓迎されたようです。
そこからGoogleを離れた後に起業してFacebookに買収されて、Facebookへ。今は投資家のようです。
Googleは長いことラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの創業者2人とCEOであるエリック・シュミットの3人を中心に進んでいきますが、こうした優れたエンジニアが多数いて運営されているんでしょうね。
本から感じたGoogle
みんなの憧れ、グーグルです。
素晴らしさは他のブログで知っているので、こういう側面もあるんだなということを。といってもGoogleの人間だったことはないので、憶測の域は出ません。
グーグルではコンピュータの学位を持っていないと格下として見られる学歴社会のようです。
大学の延長という意味合いはかなり強く感じます。
TwitterとMediumの創業者であるエブスタインがブログのサービスがGoogleに買収されたため、一時期在籍したグーグルの学位がうんぬんという点に嫌気をさしていました。
彼らは本気で優秀な人材を求めており、39歳の人を採用する際に、大学進学適正試験(日本でいうセンター試験)の資料の提出を求めたそうです。
どっかに行ったんじゃないかな、あはははーみたいな回答をすると、では覚えている範囲で良いですと本気で回答を求めてきたようです。
終盤ではFacebookとの比較で、Facebookは経験がなくても若い人間に任せて思い切りやらせるのに対して、Googleは上級幹部という経験のある人間が教授のように監督するようです。
口コミを見ていてもエンジニアに取ってはいい会社かもしれないけど、といった感じです。どんな会社も良い面・悪い面あると思います。
本の中で描かれるラリー・ペイジの常識破りな振る舞いを見ていると、まあ、そうかなーと感じる部分があります。